評価:
貫井 徳郎
朝日新聞出版
¥ 1,890
(2009-02-20)
コメント:一般市民のみんなの罪とも言えない小さな罪、無責任が積み重なり2歳の子どもの命を奪う事故は起こった。


一般市民の日頃の何気ない行動。
ちょっと自分可愛さにやっちゃう小さな罪と無責任がある。
それが以外な結果をもたらすこともあるという話です。



娘にいままでの人生を見下され、
街路樹伐採反対運動で娘に見返してもらおうとする中年女性。

仕事一辺倒で生きてきて定年を迎えた時に、
家族との隔たりを感じて心の隙間を埋めるべく子犬を飼い始めた老人。

虚弱体質でよく風邪をひく。
病院の混雑がイヤで夜間診療時間を利用することを思いついた大学生。

車の運転が苦手で、いつも恐る恐る運転しているOLの女性。

ひどい潔癖性の精神疾患を患った植木職人。

特に上昇志向もなく、平凡に暮らせればいいと考えている市役所職員。

医療に身を捧げて身体をこわすなど馬鹿らしいと、
夜間診療のアルバイトに身を置く若い医師。

何気なくやってしまう小さな罪が重なって大きな塊となり、
2歳の幼子の命を奪う結果となった。



綿密に練られた伏線。
それがひとつの事故につながっていく展開には脱帽です。
ちょっとコミカルな部分もあって荻原浩さんの作風に似てるかも。

これを読んで、自分の日頃の行動をふり返ってしまいました。
「このくらいは・・・」という何気ない行動が、
自分の知らないところで大きな事故を引き起こしているのかも知れない。
そう思うと、これからの生活を改めさせられる本です。


JUGEMテーマ:読書
 

評価:
齋藤 智裕
ポプラ社
¥ 1,470
(2010-12-15)

流行に乗せられるのも癪なような気がして、
どうしようかな〜と思っていたら、いつものコンビニでこれを売っていた。
コンビニでも仕入れるほど話題になってるんだね。
噂では初版本だけで印税が1億円を超えるとか・・・。
才能があるって素晴らしいですね。
文才のない僕には羨ましい限りです。(笑)

俳優業でも活躍して、人気絶頂の時にそれをあっさり辞めて作家に専念。
その作家業でも1作目から成功だもんね。

コンビニの女の子が、
「水嶋ヒロっていいところばっかりですね。顔よしスタイルよし俳優で成功して小説でも成功して才能を独り占めって感じ。こういう人って以外と性格悪い?(笑)」だって。
でも見た限りでは性格も良さそうですよね。
絢香さんを支えるためにきっぱり俳優を辞めて、
いつもそばにいられるように作家になったのかなぁとひとりで考えてます。


前置きが長くなりました。

第五回ポプラ社小説大賞受賞作
「KAGEROU」


―――廃墟と化した古いデパートの屋上。
ヤスオは40年間の人生にピリオドを打とうと決意して金網のフェンスに手を掛けた。
会社のリストラ候補にあげられて、憤りのままに会社を退社した。
しかし次の仕事が決まらずにいつの間にか多重債務者に。

フェンスをよじ登り始めたその時「あの・・・」と声をかけてきた見知らぬ男。
一旦は躊躇したがそれでもフェンスを飛び越えようとしたとき、男に足首を捕まれた。
死に損なったヤスオに男は、飛び降り自殺の悲惨さを得々と語る。

管理会社のひと?宗教の勧誘?自殺防止協会とか?
男が差し出した名刺には「医療法人 全国ドナー・レシピエント協会 スペシャルコーディネーター」とある。
男の名前は京谷貴志。
苦痛もなく死ねて、しかも臓器が多額の金になるという。
借金を返しても相当のお金を親に残せる。
ヤスオはキョウヤのその話に乗った。

肉体と魂を分かつものと何か?人を人たらしめているものは何か?
深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。
そこで彼は一つの儚き「命」と出逢い、かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る―――



正直ちょっと侮ってました。
つい先日まで俳優をやっていたひとが、
いきなりそんなにたいした物は書けないだろうと。

でも、ちょっと読み進めるうちに「これは本物かも」と思った。
文体がすごく読みやすくテンポがいい。
セリフの書き方がすきです。
ちょっと比喩表現が臭いかなという所が1〜2箇所ありましたけど、
とても処女作とは思えない軽やかな著作です。

普通、単行本では1ページに800字くらいの活字が並びますが、
ポプラ社の本は500字ちょっと。
文字も大きめで行間が広く読みやすい。
まぁそれだけページ数の割には文章も短いと言うことですが。
それでこの値段は正直高いです。
1200円くらいでよかったかな。

230ページほどですが、
コミカル&リズミカルで読みやすい文体も相まって2時間ほどで読了できます。
短編ほどは短くないが、しかし長編小説とも言えない。
あえていうなら中編って感じでしょうか。
あっけないなぁという気もしますけど。


「いまごろになってようやく気づいたんだけど『死にたい』って、裏を返せば『生きたい』ってことなんだよね。死にたい気持ちが強いからこそ生きたい気持ちも強くなる。最期に夢の中のオフクロがそれを教えてくれた気がするよ」
「よかったですね」
 キョウヤがポツリとつぶやいた。
 意外な言葉に思わず振り向こうとしたヤスオに、キョウヤが続けた。
「そのことに気づけて・・・・・・よかったですね」


ちょっとコミカルなヤスオの言葉や、まるでチェ・ホンマンのような看護師に笑っちゃう。
そして40男と美少女の恋?にホロリとしてしまう。
最期はハッピーエンド?で読後の気分も良かったです。
次回作が楽しみです。
次はもう少し長いものが読みたいですね。

僕的には今後の期待感も込めて文句なしの☆5つでした。(^_^)



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評価:
重松 清
朝日新聞社
¥ 1,575
(2008-02-07)
コメント:猫にまつわる人間模様7編。


2泊3日、毛布付き
我が家にレンタル猫がやってきた。


猫が出てきますけど猫は主役ではなく、
その猫をレンタルする人々の姿を描く短篇7編。
猫をきっかけに描き出す人間模様。
人間大好きな重松さんらしいです。

1、花粉症のブランケット・キャット
2、助手席に座るブランケット・キャット
3、尻尾のないブランケット・キャット
4、身代わりのブランケット・キャット
5、嫌われ者のブランケットキャット
6、旅に出たブランケット・キャット
7、我が家の夢のブランケット・キャット

なぜか6章だけが猫目線の描き方になっています。

重松さんって猫好きなんでしょうか?
猫の特徴をよく捉えています。

気楽に楽しく読める1冊でした。



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評価:
貫井 徳郎
双葉社
¥ 1,000
(2005-06)
コメント:症候群シリーズ最終章。罪を免れた被告人に復讐するのは悪か?この世の正義とはなにか?



警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。
そのリーダーである環敬吾は、部下の原田、武藤、倉持に、
一見無関係に見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。
それは未成年や心神喪失などで法の裁きを免れた被告人を、
事故を装って報復する職業殺人者の存在を示していた。

しかし倉持は被害者家族としての過去の自分と重なる捜査を断った。
捜査が進む中、核心に近付くにしたがって倉持の影がちらつく。
はたして倉持は職業殺人者の側に回ってしまったのか・・・。

「大切な人を殺して罪を逃れた相手に復讐するのは悪なのか?」
「この世の正義とはいったい何なのか?」
「やりきれない家族の思いを遂げてあげるのは罪なのか?」


珍しく妹が「これ面白いよ」と言って貸してくれた文庫本。

現在の法の下では復讐は許されない。
未成年者、心神喪失者ということで1年ほどで社会に復帰する犯罪者達。
しかし罪を償うことを免れた犯罪者が手厚く保護されながら、
被害者遺族を護る法律は何もない。
罪を犯した犯罪者達の多くは更正してはいない。
何よりも大切な家族を奪われながら遺族は何も出来ないのか。

先日も自分勝手な理屈で耳かき店の若い女性と祖母が殺害された事件で、
死刑判決を求刑した裁判で無期懲役という、
被害者遺族には到底受け入れられない判決が出た。
陰湿なイジメによって命を絶った子どもの親たちの無念。
理屈で分かっていても同じ苦しみを味合わせてやりたいというのは、
自然なこころの働きではないか。
犯人に少しも反省の色がないならなおさらだ。

法律的には許されないと思いながらも、
読んでいるときに職業殺人者の側に荷担してしまう。
現行の法律はおかしいよなぁと思ってしまう自分が居ました。

ページ数にして700ページ余り。
かなり読み応えがありました。

終盤、職業殺人者の正体を知ったときには、正直かなり驚愕しました。
「失踪症候群」「誘拐症候群」と続き、
症候群シリーズの3作目にして最終章だそうですが、
前作を読んでいなくてもスリル満点で面白かったです。


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評価:
宮部 みゆき
中央公論新社
¥ 1,890
(2010-07)
コメント:「おそろし」の続編です。ちょっと恐くてかわいくて、悲しいお話。登場人物も増えてますます面白い。



『おそろし』三島屋変調百物語事始の続編です。

さぁ、おはなしを続けましょう。
三島屋の行儀見習い、おちかのもとにやって来るお客様は、
みんな胸の内に「不思議」をしまっているのです。
ほっこり暖かく、ちょっと奇妙で、ぞおっと怖い、百物語のはじまり、はじまり。


今回も短篇連作の形です。
序章とエピローグは別として4話の不思議が収められています。

第一話「逃げ水」
その男の子がいると水が涸れてしまうという不思議。
男のそばには山の神がいつもいるという。

第二話「藪から千本」
針問屋住吉屋の娘の婚儀が決まった。
めでたいはずの花嫁がなぜか裏口から嫁入りに。
角隠しの隙間から見えた女性は娘とは別人のあばた顔だった。

第三話「暗獣」
空き屋敷に住まう「くろすけ」と名付けられた、人を恋しがるお化け。
だけど人と接すると体が弱って小さくなってしまう。
隠居夫婦と「くろすけ」のふれあい。
暖かくも悲しい物語。

第四話「吼える仏」
雪深い山里で行われる奇妙なしきたり。
それによって引き起こされた大惨事。
身重の妻を村人によって死に追いつめられた男が鬼と化す。


第三話の「暗獣」はジブリ映画に出てくる「くろすけ」に面影が重なる。
かわいらしくて悲しい物語でした。
ちょっとホロリとしてしまいます。

今回は新たな試みなんでしょうね。
各ページにはかわいらしい挿絵が付いています。
それがまたページをめくるごとに楽しめます。




おちかの周りには新たなキャラクターが増えて、
ますます面白くなってきました。
エピローグの最後の文に「おちかの百物語は続いていく・・・」とあるので、
今後もこのシリーズは続いていくんでしょうね。
嬉しいですねぇ。

特撮とかも必要でしょうけど、
これはドラマ化したら面白いでしょうね。
おちかの役は日向千歩さんとか、桜庭ななみさんとかいいかもね。




早く次回作・続きが読みたい宮部みゆきの百物語です。


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